海老原さんの家
東京都葛飾区の住宅街の角地に計画した4人家族のための住宅です。
街角には独立した音楽室を併設しています。このスペースは将来的には切り離して他人に貸す事もできるし、家族の誰かがたまにお店をしても良いし、地域活動の拠点にしても良い。
住まい手の海老原さんご家族といろんな妄想を膨らませた結果、同じ敷地にはありつつも暮らしとは切り離した形で計画しました。
この音楽室のボリュームが街角にある事で、ご家族の静かな暮らしを人目から守るという大切な役割も同時にあります。
御家族4人は50代〜80代で、それぞれに独立した成人であるため、個々の生活の独立性が高く、終の住処として平屋に近い暮らしをご要望されていました。
そういう意味では「単世帯住宅」というよりも、4人のためのシェアハウスのようなイメージの暮らしです。
そこで共有する中庭の周りに距離を持ちつつ、集落のように個々の暮らしが存在しているといいなと考えました。
外壁の仕上げやボリュームを細かく切り替えているのはそのためです。さらに「将来この家で家族を順番に看取りたいので、在宅ケア、訪問ケアがしやすいようにしたい。」というご要望もありました。
そこで外部からのアプローチを音楽室を囲む様に2つ設けています。
一方は車椅子で出入りできる様にスロープとし、訪問介護の際の他者の出入りをスムーズにしています。
そして玄関近くの個室を「看取り部屋」として設定し、家族を順番にストレスなく、長期間介護のしやすい動線計画として考えました。
そういう意味では4人家族の住宅でありつつ、未来のケアハウスでもあるという、2重の未来を重ね合わせた計画となっています。
中庭は個々の独立した小さな家々が建ち並ぶ事で発生したかのように。
その隙間から入り込む社会との連続性を感じつつ、いつか訪れる死を暮らしの中に内包しているように。
ご家族の静かな日常が住宅街の閉じた1軒家の中での出来事となるのではなく、街や社会と接続した物語となるといいな、と考えました。
完成後、未来の介護用にと設けた第2の玄関を開け放したら、家中に街の風が流れ込んできました。
日常のために設けたのではない扉が日常を豊かにするという事。
シェアし連続する事が未来のケアを豊かにする事。
とても大切な学びのある設計をさせていただいたと思います。