06.0.3.01 五百羅漢の家(後半)
さてさて、昨年末に、突然の御相談。
お年寄りのデイサービス事業と、養護学校の学童クラブを同時に行う建物のご相談です。
実は、僕とハラさんは、前職の象設計集団時代に、老人ホームや保育所の設計経験があり、ハラさんにあたっては、大規模な特養を2件まるまる設計のキャリアがあります。ハラさんは、設計に当たって、全国の老人施設を見学したり、寮母さんの実習までしていたので、葛飾の老人ホームが完成した時には、施設側から、
「この際、儲からない設計なんか辞めて、うちで働いてくれませんか??」
なんてスカウトされたくらいです。
しかし、上記のようなキャリアは、よっぽどのニコ設計室マニアしか知らないネタのはず・・・。
「なんで、ですか??」と聞くと、
「うーん、直感です。
」との事。
そっちが直感なら、こっちも直感で返すのが礼儀というもの。
社長さんの福祉に対する考え方は、非常に明確で、共感のできるものでした。
ただ介護する事が目的ではなく、お年寄りや養護の子供達が社会参加できる支援をする事が、福祉の究極の目的である、という事。
真っ白い施設ではなく、おいしいコーヒーの臭いがいつも漂って、お年寄りもちょっとおしゃれをして行きたくなるような場所である事。
街の人達も気軽に入ってこれて、街の人も「行ってみたい」場所である事。
地域に自然に開かれた場所となる事。
そして、一番印象的だったのが、社長さんが、スタッフに僕らを紹介してくださった時の言葉でした。
「おーい、新しい家を考えてくれる人だよ。」
そうか、この人達は、「新しいシセツ」じゃなくて、「新しいイエ」を作りたかったから、我々に声をかけてくださったのか。
この一言で、実は全てが繋がっていきました。
デイサービスのおじいちゃん、おばあちゃん。
養護学校の学童の子供達。
若いスタッフの皆さん。
この全ての世代がそろう、この場所は、まさに家です。
ちょっと大きいけれど、この場所は、みんなが、「わたしたちの家」と呼べる場所になるべきなのだ。
それが
僕らがの直感だったので、それをそのまま設計してお見せしました。現在実現に向けて進行中です。
さて、そんな訳で、この「五百羅漢の家」のお話しがあった時に、真っ先に思い浮かんだのは、先に書いた佐賀のおばあちゃんやおじいちゃんとの記憶でした。
別に介護や福祉を勉強した訳ではないんですが、僕の体に染みついた記憶。
ありがとう、の一言も言えないまま、でしたけれど・・・・・。
ニコ設計室 代表 西久保毅人