05.11.23 再会

 
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植木さんの家(町田市)
横の空き地にいつもいるうさぎちゃん。
植木さんの御厚意により、
現在12/10(土曜日)にオープンハウスを
予定しています。
ちょっと遠いですが、気持ちのよい空間と、
うさぎに会いに是非いらして下さい。




小林さんの家(鶴見区)
てきぱきと、非常にスピーディーに工事が
すすみ、外壁工事が完了しました。
接していて、すがすがしいような気持ちの
よい工務店です。
また、小林さん御夫婦の決断の潔さが、
そのまま形になったような住宅である事を
つくづく感じる住宅です。

外壁には、初めてガルバリウム鋼板の小波板
という製品を使用しています。
ガルスパン等と比べて、大きな面を縦方向に
継がずに施工出来る事と波の細やかな表情が
特徴です。

05.11.23 再会

今朝、電車の中で嬉しい再会がありました。


誰かというと、ウイークエンドホームズ社という建築プロデュース会社の設立者であり、CEOの
大場壹朧氏です


僕が「おうちやさん」の第一歩を踏み出せ、そしてニコ設計室の現在があるのは、大場氏との出会い抜きではありえなかった、と思っています。

2001年。東京に、何の縁もゆかりもない独立したての僕が、住宅の仕事を受注する事は、想像以上に大変でした。建築家と言われる人の多くは、その第一作目に親戚の家、親の実家、友人の家、など縁故関係の仕事でスタートを切る事が多く、それは裏を返せば、そのくらい「実績」という名前の信頼感がないと、1千万円以上の住宅を任せてもらえない、という現実もあります。

そこで、そんなものとは縁のない僕は、当時、立ち上がり始めていた「ネットコンペ」というモノに、望みを託しました。

1物件に対して、15〜30近く提出される案の中から、お客さんが3〜5案選んで、最後は面談で決定する、というしくみなのですが、めでたく最初の「酒井さんの家」と「星さんの家」が面談に選ばれました。

選ばれたのはいいけれど、他のメンツは30代後半から50代のベテランまでで、

「そのなかから、はたして29才の、しかも独立してから無経験の僕が選んでもらえるだろうか?」

と、ハッキリ言って、僕にはめちゃくちゃ高ーいハードルに見えました。

だから、経験はないけれど、出来るだけの事をやろうと決めて望んだ面談の場で、偶然どちらにも立ち会って頂いたのが、大場氏でした。
(今では、会社が大きくなって、ありえないでしょうけど・・・。)

今思えば、つたないプレゼンだったと思いますが、何とか最終選考に残り、酒井さん、星さんに新居の設計者として選んで頂けたのですが、やっぱり二家族とも、
「やる気はありそうだけど、無経験の僕」にかなりの不安があったと思います。

それを、影ながら後押しして頂いた(と今でも思っています。)のが、大場氏なのです。

受注後も、初めてのお客様との対応に、あたふたしている若造の僕に、いろんな段階でアドバイスを頂きましたし、時には、不甲斐ない僕をきちんと「それはダメだよ、西久保さん。」と厳しく怒って頂きました。

大場さん自身は、建築家でも何でもないのですが、各段階で頂いた「言葉」には、

「一生に一度の夢の詰まったたくさんのお金をお預かりする、という事の重大さ」と、

「それを任せて頂いているお客様への接し方」

といった、社会人としての基本中の基本のような精神がぎっしり詰まっていて、毎回、自分の未熟さにハッと気付かされました。

そして、その言葉の先に、どんな状況でも自分の利益ではなく、「お客様」がある事を感じ、
ホンモノのプロを見た気がしました。
それは、社会人となって数年経った僕にとって初めての経験でありました。

当時、彼の会社は、本当に設立したてで、いかにも少人数のベンチャー企業だったのですが、それからたったの4年で資本金は2億を超え、来年には、新宿の一等地に自社ビルが完成する程の急成長
をとげています。

コンペのシステムも随分変わって、大場さんも大忙しになり、それから2年ほどお会いする機会がなかったのですが、感謝の気持ちを伝えたくて、事ある事に「大場さんに会いたいなー」と思っていました。

そしたら、現場へ向かう電車の中、偶然大場さんを見かけたのです。

もう、人がいなかったら、抱きつきたい位の勢いで近寄り、「大場さん、西久保です。」とそれからは、周囲も気にせず、10分くらいの間、たまっていた思いをはき出すようにこの2年間のことを話してしまいました。

「おいおい、満員電車の中で、はずかしいから静かにしろっ。」

と言いたげな、大場さんの視線を完全に無視して・・・・・・。


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どんな小さな事務所でも、独立したからには、自分がトップです。
だから、なかなか自分を正面から叱って、間違いを正して頂く機会が極端に少なくなります。

それが、僕は独立して、一番「こわい」し「さびしい」、と思っています。

早くに独立してしまった僕のやっている事、発している言葉、振る舞い。

もしかしたらたぶん、間違いだらけかも知れません。

だから、時に、「西久保さん、それは間違ってるよ、全然ダメだ。」と往復ビンタをくらわしてくれるような方が周りにいるかどうかが、とても大切だと思っています。

そんな、僕にとってかけがえのない方の一人である、大場氏と偶然再会する事ができ、初心にもどるような朝のひとときでありました。

それから向かった完成間近の小林さん、植木さんの現場では、どちらも非常に喜んで頂いているのを感じ、さらに気合いの入る一日でした。


おしまい。