05.10.04 なまえのない空間

 
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この写真は、本日の横浜市鶴見区K邸の
配筋検査風景です。
構造の筬島さんに見てもらいました。
右の話とは何の関係もありません。
新興住宅地の30坪の土地に建つ三角形の
平面の住宅です。なぜこのような平面に
なったかというと、南からの光をきちん
と面で受けるという事と、庭が奥に奥に
と続いていく奥行き感を出したかったと
いう事。
後は、道に対していばって建たないという
事。1月完成予定。

05.10.04 なまえのない空間

一月ほど前に家族で荻窪の事務所にいらっしゃったご家族から、先日御連絡いただき、家造りの
お手伝いをさせていただける事になりました。
いろんな形でお問い合わせを頂くのですが、今回は、土地もまだ決まっていない状態からのスタートです。

ですので、設計自体は、全然始まってもいないのですが、そのご家族とのお話しの中で、ずっと心に残っていて、きっと、この家づくりのキーワードになるであろう言葉がありました。
それは、
「個人に属するスペースはいらない。エリアは個人に属するのではない。」
「スペースは、行為に属するのだ。」

という言葉でした。

僕なりに解釈すると、つまり、家というのは個人のスペースの集合体ではない、という事かもしれません。
そして、リビングとか、ダイニングとか、和室とか、当たり前のように使っている「室名」
すら、考え直してみたい、というような思いも感じました。

正直いって、僕もついつい、「リビングはですねー、」とか、「子供部屋はですねー 」とか言っちゃいますし、建て主さんのほうも、「リビングは広くて吹き抜けで、、、、リビングが6畳はちょっと、、、」みたいな事から家造りが始まる事が多いです。
だけど、大切なのは、室名ではなくて、「どんな場所か、そこで何をしたいか?」である訳で、一言でリビングといっても、家族の数だけそこで行われる事は違います。

そして、さらに大事なのは、完成した建物の床には、室名なんてかいていない、という事。
室名が書いてあるのは、図面段階のみで、完成したリビングに「リビング」なんて書いてありません。あるのは、「なまえのない空間」のみです。

リビングだから窓を大きく、ではなくて、そこの場所でどのように過ごしたいから窓を大きく。
ダイニングだからそこで食事をする、というよりも、食事がおいしく楽しめそうだから、そこで食事をとる、みたいに、室名に行為を誘発されるのではなくて、場所の雰囲気に行為が誘発されるような場所。
皆で雑魚寝するような場所や、一人っきりになれるちょうどいい場所。
そんないろんな場所の集合体が、家なのかも 知れません。

そして、この事は、すべての家造りにあてはまる事だと思っていますし、ついつい、安易に室名を当てはめて設計しようとしてしまう自分への反省でもあります。

読んでみて、「なんのこっちゃ」という感じの話しでもありますが、設計者としては、一軒一軒、
このように初原的なスタートラインから家を考えていきたいと改めて考えています。

さてさて、そんな、なまえのない空間について考えている我が家には、もうすぐ、まだなまえのない3人目の赤ちゃんが 誕生します。このはなしの流れでは、赤ちゃんにもなまえがない方が良かったりもするのかな?