04.11.14 後輩たちへ、はじめての言葉


 
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機会があり、母校である明治大学の後輩たちへ文章を送りました。
せっかくだから、ここにも載せておきます。
僕は、教育の現場が好きなので、呼ばれるとヒョイヒョイと二つ返事で行ってしまいます。
そのうち、大学でまた、教えられるといいなー、と思いつつ、実情は、本業が忙しく、それどころではないのですけど・・・・。


明治大学の後輩達に寄せて

●学内コンペとその先にある世界●

明治大学OBとして、記念すべき第一回MADSコンペの講評に呼んで頂いて大変光栄に感じています。
コンペ自体は、「多次元住宅」という大変難しいテーマで、そのテーマに対してどのようなスタンスを
取るか?というのが一番のポイントだったと思います。
そもそも答えはないので、取り組んだ学生が、その自分の「スタンディングポイント」を明確に出来たかどうかを、
僕は審査のポイントとしました。

それは、コンペに限らず、僕が自分の設計をしたり、他の建物を見る時もいつも考えている事で、そのような意味では
演劇でも、プロダクトデザインでも、小説でも、教育でも、実は大切なのはそこなのでは、と思うのです。

実際、社会に出ると、建築を作り上げる、という作業は一筋縄ではいきません。
施主、敷地、法律、経済、環境、近所の人、施工者、職人さんなど複数に絡み合う情報、条件を処理しながらの
戦いです。おまけに建築は、時間がかかります。
あまりに、処理すべき条件が多すぎて、その中に埋もれて、自分が最初に何をイメージしたかなんて、忘れてしまう
ケースも少なくないと思いますし、その長い時間の中で、最初に持っていた「熱い思い」がさめてしまう人もいるでしょう。

その中で、結局一番大事なのは、
最初に描いた世界をどれだ強く持ち続けられるか?
その最初に描いた世界観が他人にもきちんと共有され、どれだけの人を巻き込めるか?

という事なのです。

つまり、そのアイディアに強い魅力があって、どんな事があっても、実現したい、実現すべきだ、ぜひ見てみたいよなー、
という強さがあれば、どんな複雑な条件に出会っても、負けないでいられるのです。

それが、最初にかいた「自分の立ち位置(スタンディングポイント」の明確さ、であり、「アイディアの骨格」の強さなのです。

そんな意味で、学生コンペで今、君たちがやってるのは、そのための一番大切なトレーニングなのです。

だから、とりあえず、他人が何と言おうといいじゃないか、そんな事を気にするよりも、そのテーマをもらって自分が
何を感じたか、何をやりたいと思ったか、を120%出し切って、ぶっちぎりの一等賞か、講評者が怒って帰るくらいの案を
せっかくだったら出し続ける、くらいのスタンスで挑戦する機会となれば、エキサイティングでいいなーと思っています。

僕の時代にも、学内コンペがありました。
実は、学生時代の思い出で鮮明に覚えていたり、今の自分に影響を与えているのは、当時先輩達が出してきた魅力的な
学内コンペの案や、そのプレゼンの堂々と審査員に立ち向かう姿だったりします。
その案は、設計製図の課題では、決してありえないものばかりで、同じ土俵で先輩達と戦い、負け続け、
いつかは僕もあんな風になりたい、とあこがれて見ていたものです。
そして、卒業していまだに仲良くしていたり、お付き合いのあるのが、実は学内コンペで戦った先輩や後輩だったりしています。

ですので、実は、こんな事を見すえて、学年の枠を超えてぶつかり合える場を提供してくれているのが、
僕の恩師である、小林正美教授だという事を、とても誇りに思っています。
コンペの場をを立ち上げ、維持するのに、小林先生も戦っていると思います。
だったら、学生はそれに十分あまえて、その学内コンペという舞台で、存分に暴れまくってくれ、というのが、OBとしての
メッセージです。

最後に、僕が学生時代出会って、設計の原動力になっていた2つの言葉を贈ります。

 

誰も見ない夢を、
誰も見ないかたちで、
表現できる自由と権利を、
100%保有しているのが、
学生なのです。

  
      第一工房 高橋ていいち氏

 

大胆であれば、幸運をつかむ。
いいか、わるいか、は問題ではないのだ。

      象設計集団 樋口裕康氏





おわり。

明治大学 小林正美研究室 3期生OB
一級建築士事務所 ニコ設計室 代表 西久保毅人


(0411.05 にしくぼ)                                                          ホームへ


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