都市ののカンサツ13   03.12.02

 
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築70年の鉄塔の家

先日、電話にて問い合わせを頂き、さっそく敷地に伺いました。
杉並区で近かったので、自転車でブラリと。

「さて、今度はどんな敷地だろう、今度は意外と普通かも?」

新しい敷地、新しいお客さんに出逢うときは少し緊張します。

どうやら敷地は、小さいらしい、という事くらいしか情報なく、自転車で探していると何だか怪しい風景に
出逢いました。


何だろう、アレ、小屋かな?・・・・・小屋だな。

まさか、アレではないだろうけど、近くまで来たし、見てみよう。
と、軽い気持ちで近づいてみたところ・・・・・。

アレが、ソレでした。

つまり、今回の敷地となる、お客さんの現在の家。
表札を見るまで半信半疑でしたが・・・。

周辺は、ほとんど立て替えが住んでいて、普通の住宅街の風景なのですが、この場所だけ、時が凍り付いたような
平屋のしかも道路にはみ出した建物が建っていました。
おまけに、 屋根には、所狭しと大きな鉄塔が建てられています。



この住宅(?)、実は、今回のお客様のお父様が、戦前に中古!で買われたそうで、かるく築70年を過ぎているそうです。
その住宅をお父様が、自らの手で増築、改築、改修を繰り返し、現在の姿となっています。
家の中も、ほとんどお父様の手作りの家。
例えば、下の玄関収納や、建具類全て、お父様がこつこつと作られたそうです。
おまけに、道路側のサッシなんかは、サッシ屋さんで、サッシのみ購入し、ご自分で壁を切って取り付ける、という徹底ぶり。
とにかく、ご自分で何でもやるのがお好きなのです。
屋根の鉄塔は、お父様の趣味のアマチュア無線用のもの。こちらももちろん自分で付けた物です。






好きがこうじて、こうなりました、という次元ではない、家族の生活の歴史、というか人生の歴史に溢れた家です。

ここを取り壊して、娘さんご夫婦との2世帯住宅 を御希望されており、現在検討中なのですが、このような素敵な生活を築きあげた
ご家族にどんな空間が似合うのでしょう。

ツルツル、ピカピカとした完成品では、お父様のストレスがたまって身体を壊されるかもしれませんね。
常に自分の手で工夫して手を加えたい、という性分は、実は長年連れそった奥様や、ここで産まれ育った娘さんも同じようです。
妹さんだけは、「もう家中穴開けられたり、雨漏りはいやだー」と悲鳴をあげていましたが・・・。

 

僕は、まず最初にこのご家の中でお話を伺いながら、
「はたしてこの家を壊していいのだろうか?」
という事を最初に考えてしましました。
できれば、そのままこの家を残しておきたいくらいです。

それが、無理なら、何年後かに、違う形で、またこのような世界に結びつくような骨組みだけシンプルにつくってあげられないだろうか?
と考えています。

はたして、この家に勝てる家が設計できるだろうか?
この家は、今まで出逢ったことがないくらい、強力なライバルとなりました。

まだ検討し始めた段階ですが、

「また面白い生活に出逢ってしまった」という感想。

ぜひ、ご家族の生活像にピッタリの住宅を造りたいと考えています。

いやー、感動しました。




では、またいつの日か。