都市ののカンサツ02  03.9.30

 
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子供の巣作りとにおい付きのメール

 

以下は、僕の子供たちの通う保育園のメーリングリストにて、少し前に書かせていただいた文面です。(少し編集)

H邸の裏コンセプトでもあり、これまでもずっと考えてきた事、これからもずっと考えていきたい事でもあるため、
この場にも残しておきます。

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西久保です。


以下は、あの家の裏コンセプトです。
長文ですので、暇なときにでも読んで下さい。

丁度、保育園という事でお話すると、
あの家の個人的なコンセプトは子供部屋の在り方でした。
御覧になったように、あの家には子供部屋ってないんです。
仕事を依頼された時、丁度うちと同世代のお子さんがいるという事で、あれこれ提案
させて頂きました。
子供と親の関わり方って、その成長段階に応じて変わってくるものだと思います。

・少なくとも今は必要ない。
・でも、もう少ししたら少し自分の場所が欲しくなる。でも完全に親との分離はできない。
・思春期になったら、親に全てを見られたくなくなるかもしれない。
・そして、いつか出ていく。


そんな親と子の関係の変化を最初から楽しめる家にしたいと考えました。

子供部屋 欲しけりゃ 自分で カンカンカン  みたいな感じです。(一句)

僕は、子どもの巣作りの家、と呼んでいるのですが。

そんな提案が丁度可能な子供の年齢でしたし、オーナーも同意見でしたので、
あのような家が実現しました。
これから先、あの家の使われ方は、どんどん変化していくと思います。
そのために、広いロフトスペースを準備しました。

子どもが、かなづちとノコギリを手に、ロフトを仕切り出すかもしれない。
でも、もしかしたら、あのままで開けっぴろげな家族関係が生まれるかもしれない。
父ちゃんと仲良く、ロフトを共有するかもしれない。


そんな意味であの家は、未完成です。
汚れてきたら、色を塗りかえたり、細工をしたり。
そんな事を楽しみながら住みたい、というご家族でしたので、出来るだけその余地を
残した設計としました。
あくまで、これは一つの例ですし、全ての家に個室を作りたくない訳ではないです。
もちろん、ご家族に会わせて臨機応変にやってます。実際は。

ただ、僕の中のテーマとして、「親と子供の距離感の変化」をどう住宅のプランに反
映させられるか?というのは、今後も研究していくテーマです。

住宅であれば、親と子、保育園であれば、保育士と子供達、街であれば家と家、等
僕らの仕事はそれらの適度な「距離感」を空間に反映させてどう設計していくか?という事なのです。

ケータイやインターネットの普及で人と人の距離感も微妙に変化しつつあります。
何にでも手が届く、気がするだけで、実は何にも手に入れていなかったり、
メールやチャットで距離が近づいた、つもりでも、実際はどんどん孤立していっていたり・・・。

僕ら世代はまだ、その時代の変化と共に成長出来ましたが、僕らの子ども達は、何で
もネットで検索でき、誰とでも出会えちゃう時代にいきなり飛び込んでいくのです。
近頃起こる、あまりに不幸な少年犯罪も「距離感」の麻痺も原因なのではないかと考えています。

家ってそういう「距離感」を身体で感じ、身につける最初の場所だと思うんですね。

「父ちゃん、くせーよ。おならするなよー」みたいな。
やっぱり近いから、臭いわけで・・・。
でも、メル友のメールからは、においはしません。残念ながら。

変な例ですが、子供達ってそんな臭かったり、うるさかったりを少なくとも五感のど
こかで感じて初めて「距離感」を学習していくのではないか、と自分なりに考えてます。

僕が作らせて頂く数件で、世の中変わる訳ではないですが、そんな事を考えつつ、
今後も活動していく予定ですので(つぶれなければ、ですが。)、今後とも宜しくお願いします。

以上、裏コンセプトでした。

このメールが、におい付きでありますよう・・・。

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では、またいつの日か。